ACT:65 遠さ



3人が軍に戻ると、ちょっとした騒ぎになっていた。
昨夜遅くにイオク側が無条件降伏を表明する使者を
ガーセンの同盟国の一つ、ヒューロンに送って来たと言う知らせが入り
その真相を確認する中で、術師の長であるテレストラートと
その護衛のジーグの居所が不明なのが分かると
何かの陰謀では、と憶測が憶測を呼び
不確かな情報が飛び交い軍は混乱していた。

テレストラートはセント将軍に昨夜の出来事を部分的に伏せて報告し
ガーセン軍はその日の内に1大隊をイオクの王都ローザに送り
ピーティオ王を『保護』
ローザを完全に管制下に置いた。


その部屋は乾ききらない血に、どす黒く染め上げられていた。

イオクの術師の長であり、王の相談役でもあったその男、サシャが
前王に換言を労してそそのかした、此度の戦の首謀者で有り
幼いピーティオ王を傀儡として国を乗っ取ろうとした逆賊であるとして
イオクの「忠信」たちは正当な王家の手に政の実権を戻し
「平和と正義」を取り戻すために、この大罪人を自らの手で討ち
その屍をガーセン側に引渡して無条件降伏を申し出、慈悲を請うた。

テレストラートは部屋の惨状に目をやり、傍らのグイ老に静かに問いかけた。
「彼、ですか?」
グイ老は屈みこみ、部屋の中央に壊れた人形のように無造作に放り出された
男の遺骸に手を触れる。
長いローブに身を包んだ、痩せて背の高い男の体に傷はないようだったが
その頭部は原型を留めないほどに酷く破損していた。
それでもグイ老は確信を込めた声で重々しく告げる。
「サシャリアじゃ。間違いない。」
軋むように響いたその声に、テレストラートは一瞬目を閉じると大きな溜息をついた。

再び目を開けると、横たわるサシャの体を見下ろす。
その静かな蒼い瞳には何の感情も伺えない。
大型の獣にでも襲われたかのような遺体の惨状は
イオク側の主張のように、「忠信」たちが手を下した結果では無いだろう。
小さなこの国を人ならざる力で支配していた男の突然の死を期に
慌ててガーセンに白旗を掲げたにすぎない。

「いったい、誰が・・・?」
テレストラートの呟きに応えるものはない。

「彼とロサウの繋がりを知られる訳にはいきません。」
テレストラートは顔をあげ、はっきりとした声で告げる。
術師に対する過ぎる悪評は、術師が狩られたあの忌まわしい過去の繰り返しを招きかねない。
現在でも十分過ぎるほどに、術の強大さと恐ろしさを世の中に知らしめてしまった。
ガーセンの後ろ盾を失うような事になれば、ロサウの民はあっさりと狩られ
あるいは利用され歴史の中に消え去ってしまうだろう。
テレストラートは長として、何としてもそれを防がなければならない。

「彼の持ち物はすべて此方で押さえ、調べてください。
それから彼がこの国に現れた経緯とその後の行動を・・・必要ならば情報の操作を。
・・・・禁書は・・・?」
「ここには無い。気配すらも感じられん。」
「隠されているのでは?封じの術をかけて。」
「サシャがそれを行なったのなら、死によって消えうせないまでも
 術は弱まるはず。全く感じられない事は有るまい。」
「では、他者の手に?」
「そうとは限らん。はじめから禁書はサシャの手には無かったのかもしれん。」
「それは・・・。」

有り得ないだろう。
サシャ自身にそれほど力が無かった事は、実際に彼を見てみれば分かる。
彼が村から消えた時期
村から消えた禁書
異質で強大な術
関連が無いはずはない。

「無かったかもしれない、と言う観点から対処するのは楽観的すぎます。
禁書がここに有った可能性を重要視して、事後に対処をしてください。」
感情を窺わせない平坦な声で告げ
テレストラートは陰惨を極める部屋を後にした。



「ゼグス!ゼグス見つけた!」
後方から声高に自分を呼ぶ、耳慣れない声に振り返り
視線の先で大きく手をふって自己アピールをしている少年に
ゼグスは笑みを浮べた。
「耕太。」
ゼグスが応えると耕太は待ちきれない様子駆け寄ってくる。
まるで遊び相手を見つけた子犬のような様子が微笑ましくて
思わず笑みを深くし、足を止めて待つ。
短く奔放に跳ねる髪に、くるくると表情を変える瞳
テレストラートと同じ年だというが、その表情のせいか少し幼くも見えるこの姿が
2年余りの間、術師の長の体に宿っていた彼の本来の姿なのだと言う。
初対面の時から、ずいぶんと長い間テレストラートの姿で相対していたゼグスは
この姿の耕太に不思議な感じがしたものだが
若い鹿のようにしなやかで、元気に満ち満ちたこの姿は
とても耕太らしいと思った。

ガーセン軍に突然現れた形になった耕太だが
珍しい暗い色の髪を持つ彼は、黒い髪で有名なテレストラートの親族として
なんの疑問も抱かれずに迎え入れられた。
それほどに大陸の南では黒い髪は奇異であり、珍しい。

ジーグやテレストラートと共に、イオクの王都ローザに入った耕太は
目立つ異界の服を脱ぎ、今は
術師が好んで身に付ける、生成りの長衣とくすんだ緑のローブを身に纏っている。
それは耕太が既に着慣れている形の服では有ったけれど
長衣を纏い鏡に映る自分をはじめて目にした耕太は、盛大に顔をしかめた。

「変。無茶苦茶、似合わない・・・。」
「そんな事無いですよ、耕太。」
服を用意してくれたゼグスは否定したが
短髪にズルズルとした魔法使い風のコスチュームなんて、何だか凄く変だ。
大体、日本人の顔立ちで魔法使いって設定自体に無理が有る。
なんというか・・・怪しげなアジアの土産物売り・・・っていうか
「コスプレ・・・。」

耕太自身は比較的、形が自分の世界の服装に似ていない事も無い、平民の服を希望したが
未だ混乱するローザに有って、ガーセンの術師である事が一目でわかる長衣を着ている方が
要らぬトラブルを避けられ返って安全だろうというジーグの意見で、あっさり却下された。

そのジーグもテレストラートも、ローザに入ってからは忙しいらしく
テレストラートの使いだという術師や、ジーグに言いつけられた兵が
日に何度も差し入れ片手に様子を見に来ては相手をしてくれるが
当人達はもう3日も姿を見せていない。

術師も兵士も顔見知りではあるものの、特に親しい訳ではなく
兵にいたっては、初対面を装わなければならないのも煩わしい。
代わり映えのしない状況報告を受ける他は、話題も無く
する事も無く、ここ数日耕太ははっきり言って暇だった。

耕太が今滞在しているのは、イオク国王の城。
ジーグもテレストラートもこの城内のどこかにいるはずだ。
王城は完全にガーセンの管制下に置かれているので
耕太は城内なら、ある程度自由に歩く事をジーグから許されていた。
無理に閉じ込めては、かえって逃げ出し騒ぎを起すと思われているのは明らかだったが
城の探検は耕太にとって良い暇つぶしになった。
イオク王の城は耕太から見れば十分広いものの
ガーセンの王城に比べれば小規模なもので、暇に飽かせて兵とともに歩き回って見た耕太は、もう迷わずどこへでも行ける。
それでもジーグとテレストラートの姿を見かけることは1度も無かった。

状況が混乱している事は分かっているし
彼らがその中でも自分に気を廻してくれている事も分かっていたので
今は多少の不満は我慢をしている。
城の探索に飽きてからは下手に騒ぎなど起さないよう
自分に与えられた部屋でジッとしていた耕太だったが、何か胸騒ぎがするのだ。

それは漠然としたもので、感の鋭い方でも無い耕太は、予感なんて物には縁はないから
たぶん、この世界で頼れる数少ない人々に
会う事が出来ない不安のせいだとは思うのだが
どうにも落ち着かない。
まだ3日しかたっていないのに変な言い草だが
ジーグもテレストラートも元気でやっているだろうか?とそんな事が気にかかる。
特にテレストラートが心配だった。
真面目すぎる彼は、仕事に没頭すると自分の事が疎かになる。
ジーグが傍にいれば大丈夫だとは思うけれど・・・。

それに、あの朝の2人の間に漂っていた微妙にギクシャクとした空気が気にかかる。
気になりだすと、どうしても
今テレストラートに逢わなければならない気がしてきた
が、彼が今、一体どこにいるのかが全くわからない。
人が集まりそうな所を重点的に、城内を歩き回るも
テレストラートどころか、知った顔とは1人も出くわさない。
イライラと落ち着かない気持ちで彷徨っている時
ゼグスが武将らしき人物と2人で連れ立って、長い廊下の先を歩いているのが目に飛び込んできたのだ。

「ゼグス、良かった〜・・・もう、誰も捕まらないんだもん。
ティティーが今、何処にいるか分かる?」
「テレストラート様ですか?さあ・・・。
わたしも、ここ2日ほどお見かけしていませんが・・。」
頼みの綱のゼグスの言葉に、耕太ががっくりと肩を落す。
「何か、テレストラート様に急ぎの用事ですか?」
「いや・・・急ぎって訳じゃないんだけど・・・。
ここの所、見かけないし・・・どうしてるかなって・・・
ちょっと気になったっていうか・・・何ていうか・・・。」

口ごもる耕太に、ゼグスは優しい笑みを向ける。
「精霊に探してもらいましょうか?」
「本当!?」
途端に表情を明るくする反応の良い耕太に、ゼグスは笑い
「ちょっと待って下さいね。」

ゼグスが瞳を閉じ、右手を軽く掲げ謳うように静かに言葉を紡ぐ。
その音に誘われるように小さく風が吹き、ゼグスの長い髪が風に踊った。
「中央塔の大広間に居ますね。」
ゼグスに戯れるように纏いついていた風が止むと
ゼグスが瞳を開き教えてくれる。
「打ち合わせ中のようですが、もう直に終わるようです・・・あ、耕太・・・。」
ゼグスの言葉が終わらないうちに、耕太は踵を返して走りだしていた。
「中央塔の広間だね!ありがとう!!ゼグス。」
走りながの耕太の礼が、遠ざかりながら聞こえてくる。
「どういたしまして。」
小さくこだまする足音を耳にしながら、笑みをこぼし
届かないのを承知でゼグスつぶやいた。


中央塔の大広間では大掛かりな会議が終わったばかりと見えて
開け放たれた扉から、偉そうな人々が歩み出てくる所だった。
その流れに逆らい、部屋の中を覗くとテレストラートがセント将軍と何やら話をしているのが見えた。
耕太はその場で立ち止まり、2人の話が終るのを待つ。
将軍がテレストラートの傍らを離れ歩き出すのを確認して部屋に入り声をかけた。
「ティティー」
「耕太。」

声に視線を此方にむけたテレストラートが驚いたように名を呼んだ。
「やっと見つけた〜、もう、全然捕まらないんだもん。ず〜っと探してた!」
「どうしたんですか?耕太。何か有りました?」
足早に駆け寄り、心配そうな顔で聞いてくるテレストラートに耕太はあわてて応える。
「ううん、そうじゃないんだけど。」
途端にテレストラートは、ほっとしたように息を吐き
テレストラートを待っているらしい術師に先に行く様指示をすると
耕太に向き直り、それから申し訳なさそうに眉を下げた。

「すみません、耕太。あなたを放っておいて。
今はまとまった時間が取れませんが
この状況が落ち着いたら、耕太の件は必ず・・・。」
「そんな事はいいけど・・。」
「何か不都合はありませんか?何か有ったら
術師の誰にでも構いませんから、私に伝えるように遠慮しないで言って下さい。
あれから、体の具合はどうですか?おかしな所はありませんか?
少しでも気になる事があったらすぐに・・・本当にすみません・・・私がもっと時間を取れるといいのですが・・・。」
「ティティー、大丈夫だって。オレは全然問題ないよ。
それよりティティーはどうなの?顔色、悪いよ。」
「ええ、大丈夫です。
 傷も含めて、全て元通りに戻してもらいしたから。少し疲れているだけです。」
「ちゃんと、食べてる?」
「・・・・・ええ。」
応えるまでにあいた僅かな間に、耕太が表情を険しくする。
「食べてないだろう!最後に何か口に入れたの、いつ?」
「忙しくて、つい。ここが片付いたら、何か食べます。」
「ジーグは?」
耕太は当然テレストラートと共に居るはずのジーグの姿を視線で探す。
「さあ・・・私もここ数日会っていません。」
テレストラートの応えに、耕太は驚いて声をあげる。
「何で!?」
「何で、といいましても・・・。城に入った時点で、護衛の任は解かれています。
彼には別に仕事が・・・」
「そんな事じゃなくって!!」
勢い込んで言い募ろうとした時、横合いから1人の文官が声をかけ
耕太は水を挿された形になった。
「テレストラート様、お話中の所、申しわけございません。
こちらの書簡は・・・いかがいたしましょう?」
耕太に睨みつけられて、気の弱そうな男はおどおどと巻紙を差し出す。
テレストラートはそれを受け取りチラリと目を通すと
「私がセント将軍にお渡しします。ありがとう。」
用件が済んだ文官がホッとしたように離れたので、耕太が話を続けようとすると
別の男がテレストラートに声をかける。
「テレストラート様、南館へ行かれるのでしたら
誰か人をこちらによこす様に、お言付け願えませんか。
国王旗と軍旗が置きっぱなしなのです。」
「ああ、それは私が持って行きます。」
「しかし、それでは・・・。」
「どうせ行くのですから同じ事です。余計な手間をかける事はありません。」
「では・・・お願いいたします。ラセス将軍に。」
「・・・わかりました。」
テレストラートの瞳が微かに戸惑うように揺れた気がした。
彼は近くのテーブルの上に置かれている、たたまれた大きな布に手をかけると
振り向いて耕太に告げる。
「耕太、途中ですみませんが、話はまた後で。
 今夜には少し時間が取れるとおもいますので・・・。」
耕太はテレストラートの側に歩み寄ると、彼の手から布の束を奪い取る。
「オレも行く。」
「耕太?」
テレストラートは驚いた様に目を見張ったが、頑として譲らないようすの耕太をみると表情をゆるめた。
「ありがとうございます。半分、持ちますから。」
「大丈夫だって、これぐらい1人で持てる。
 大体、何で、なんでもかんでもティティーにさせる訳?
 こんなものぐらい、自分らで運べっての。」
「皆、今は手一杯で忙しいのです。出来る事は出来る者がやれば・・・。」
「ティティー以上に忙しい奴なんていないって。」
怒りながら肩に布を担ぎ、耕太は先にたって歩き始めた。

「本当にこれで戦争は終わるの?」
「ええ。イオクは完全に降伏して、ピーティオ様は王位を返還し
ニンゲへの亡命を希望していますが・・・聞き入れられるかどうか。
術を操っていた人物は既に死亡。他の術師達もガーセン軍がローザへ入る前に
イオク国民の手で殆んど処刑されてしまったそうです。
明後日にはハセフ王もローザへと入られるそうです・・・少し、ここで待っていていただけますか?」
テレストラートは廊下に面した扉の1つをノックして、中に入り1分と待たせずに出てきた。
手にした書簡がなくなっている所から、ここにセント将軍がいるのだろう。
「お待たせしました。行きましょうか。」
耕太に声をかけて歩き出したものの、テレストラートの足が次第に遅くなり
とうとうその足が止まった。
「ティティー?」
どうしたのかと耕太も足を止めて問いかけると、迷うように視線を彷徨わせてから
ゆっくりと口を開いた。
「あの・・・耕太。申し訳有りませんが、その旗を南塔まで1人で届けて頂けませんか?」
「オレが?」
「この先へ、まっすぐ行くと南館です。
一本道ですから迷う事はありません。そこにジーグが居るはずですから彼に渡して下さい。」
「いいけど・・・。ティティーは何でいかないの?
 ジーグと何か有った?」
「いえ・・・、そうではなくて、少し・・・疲れてしまって。休みたいのです。」
耕太は戸惑う。
テレストラートは否定するけれど、明らかにジーグを避けている。
・・・ように、思える。
けれど・・・、もしかしたら、本当に疲れているからかも知れない。
テレストラートは、いつ倒れてもおかしくないような顔色で
2人の関係がこじれているのなら、何とかしなければとは思うものの
無理矢理テレストラートをジーグの元へ引っ張って行くのも躊躇われる。

「わかった。」
散々悩んだ末に、耕太はそう応えた。
「ごめんなさい。勝手言って・・・。」
俯くテレストラートが何だかとても弱々しく見えて、耕太は心配になる。
「いいよ。・・・大丈夫?部屋まで送っていこうか?」
「いいえ。それ、お願いしますね。」
そう言うと、テレストラートは元来た方向へゆっくりと戻り始めた。
その後姿が何だか辛そうで、心配になる。

何でジーグはテレストラートの側についていないんだ!?
テレストラートが無理をしすぎないよう見張っているのが、アイツの役割じゃないのか?
耕太は殆んど駆けるような勢いで廊下を進むと
ぶつかる様な勢いで南館の入り口をこじ開けた。
「ジーグ!!」
中へ入ると同時に叫ぶように呼ぶと、少し離れた場所で
数人の男と図面のようなものを囲んで何やら話していたジーグが
驚いたような視線を向ける。

「コータ?」
「これ、旗。持って行けって。」
「ああ・・・そこに置いてくれ。
 コータ、調子はどうだ?悪いな、お前の事を忘れてる訳じゃない。
 落ち着いたらすぐに、お前の事は・・・。」
不満をぶつけようと思って来た耕太は、ジーグの言葉に気勢を削がれる。

まったく・・・何だってコイツらは揃って他人の事ばかり・・・。
テレストラートと同じように、開口一番耕太の心配を口にしたジーグに
かすかに踊る気持ちを押さえつけ、不満を投げつける。
「ジーグ、何やってるんだよ!」
「何って、仕事だ。」
「そうじゃなくって、ティティーの事! 何で放っておくのさ!」
「戦闘は終わったからな。城に入った時点で、俺は護衛の任を解かれた。」
「そういう事じゃなくって、気にならないの?」
「別に、あいつは1人じゃない。俺が居なくても問題は無いだろう。」
耕太に対するのとは違い、何故か冷たい態度のジーグに耕太はムッとする。
「ここのカタが付いたら時間が出来ると思う。後で行くから部屋にいろ。」
話を切り上げ、仕事に戻ろうとするジーグに不満もあらわに頬を膨らませ
それでも仕方なく部屋を出ようとすると、ジーグが耕太に声をかける。
「コータ、その・・・テレストラートに会ったのか?」
さっきは切り捨てたくせに、尋ねてくるジーグの煮え切らない態度に腹が立つ。
気になるなら、自分で見に行けばいいのに!
「何で!」
「いや・・・いいんだ。」
怒ったように、そう尋ね返すとジーグは言葉をにごし
また向こうを向いてしまった。
その態度に耕太はムカつき、テーブルの上に置いた旗を掴みあげると
思いっきりジーグの後から投げつけた。

「うわ!何しやがる!!」
驚き、怒鳴るジーグに向かい耕太は声を張り上げて怒鳴り返す。
「ジーグの大バカ野郎!!!お前の務めは何なんだよ!!バカ!!!!!」
「・・・・・な!?」
叫ぶだけさけぶと、踵を返し走って逃げた。

「何なんだよ!アイツ!!」
呆然としていたジーグが怒りの声をあげた頃には、その後姿は彼方に遠ざかっていた。


(2008.1.12)
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